素直

大丈夫か聞かれて、大丈夫じゃないと答えられる人はどれくらい居るんだろう。少なくとも俺は無理だった。大丈夫じゃないなんて弱さの証で、言ってはいけないのだと思っていた。のっぺらぼうみたいな笑顔を貼りつけて自分にも他人にも大丈夫と言っていれば、…

言語を忘れる日も近い

初心に帰ろうと数年前の自分のブログを読み返していたら、キラキラしていて目が痛くなった。わ、私ってこんなに楽しそうに毎日を送っていたの!? へっぽこぴーなのは変わらないが、昔の私はずいぶんと前向きにへっぽこぴーだったみたいだ。妄想も明るいもの…

「幸せの明かり」販売中!

ホモbot名義で出す初の同人誌「幸せの明かり」が、 DLsite.com様から販売中です。 www.dlsite.com 二作品収録で、一作品目がタイトルにもなっている「幸せの明かり」というお話です。 主人公の建祐はチビの社会人、大学のころから一人暮らしをしていたものの…

前日譚「自分の気持ちで」

大学が終わって、一人電車に揺られて帰る。明かりの灯り始めた町が、窓の向こうを通り過ぎていく。一人で帰る暗いひんやりした部屋のことを考えながら、なんだかなあと思わずにはいられない。 大学の勉強は面白いし、友だちもたくさんいる。彼女は今はいない…

命の魔女

か細い光をともす星々が、頼りなげにまたたく新月の夜。人々は街の集会所に集まっていた。それほど大きくない集会所の中は、蝋燭の火によって照らされている。壇上の右側には、立派な装飾の施された背の高い椅子が置かれ、正装に身を包んだ年若い王が腰かけ…

嗚呼、麗しき制服ジェンダーレス

ツイッターをぼんやり眺めていたら、とあるニュースに目を引き付けられた。 news.livedoor.com な、な、な、なんだってー!! そんな、男子が当たり前のようにスカートをはいていたり、女子がズボンをはいていたりしてもなにも言われないような、夢のような…

「生クリーム&わらび餅with白玉ぜんざいボーイズラブ」

私は甘いものが大好きだ。 どれくらい好きかというと、なにか作業をするときには必ず手元に甘い物がある。勉強するとき、文章を書くとき、本を読むとき、常にそばには甘い物だ。 今だって近所のセブンイレブンで買った「わらび餅&白玉ぜんざい」を食べながら…

イケメンにはかなわない

先日、初恋の人と久しぶりに会った。 私の初恋の人は小学一年生の時のクラスメイトで、高校までずっと同じ学校で、だけど同じクラスだったのは二回だけという、近いんだか遠いんだかわからない距離感の幼馴染だ。 彼との思い出を語ろうと思うと、先ほど地球…

死と睡眠

午前三時に痛みで目が覚める。 キリキリと針金で絞られるように胃が痛むのを、シーツにすがりついて耐える。少し伸びていた爪が布地にひっかかってめくれるが、指先の痛みが内臓の苦しさを忘れさせてくれる気がしてかまわず力を込める。 「だいじょうぶ、だ…

「手紙」

最近メディアになにかと椎名林檎さんが登場していて、中学二年生のころから彼女のファンな私はひそかに小躍りしている。今年も紅白に出場されるそうで大変めでたい。 中二で椎名林檎のファンになったとか、みごとに厨二病まっさかりだったのでは? とかいう…

もっと欲望に忠実に生きたい話

ああむしゃくしゃする! 私はいまとっても行方不明な気持ちだ。自分の感情をどこに向けていいかわからない。 いや、わかっているかもしれないのだけど、どう向けたらいいかわからないと言ったらいいだろうか。 世の中にはすごい人たちがたくさんいる。 テレ…

「ひとり」に焦がれて

掃除はとても大事だ。どれくらい大事かというと、掃除をしないとなんだかよくわからない菌が湧いて病気になったり、精神的に不安定になったり、なにも手につかなくなったりする。 身の回りが散らかっていると心の置き場もなくなって、安定しないんだと思う。…

昼休みの音楽会

SS

二人きりになると、「なんか弾いて」とおねだりする。そうすると成太はだいたい楽しくて盛り上がるような曲を弾いてくれるんだけど、それはあんまり好きじゃない。だから一度止めて「お前が弾きたいのを弾いて」と言うと、成太はようやくその時弾きたいもの…

瓶詰めの死

中学生くらいのころから始めた習慣がある。 朝起きたらまず鍵のかかった机の引き出しを開けて、瓶を取り出す。それから枕元に落ちている髪の毛を拾い集める。丁寧に、一本ずつ。集めた髪の毛を瓶に詰めてもとあった机の引き出しにしまって、再び鍵をかける。…

花束を私に

あの、大丈夫ですか。 しとしとと雨が降る道端に佇む男性に思わず声をかけてしまったのは、その人があまりにも悲壮な顔を、まるで今すぐにでも車道に飛び出していくんじゃないかというような顔をしていたからだった。真っ黒な傘をさして真っ黒なスーツを着て…

マジでいじめられっ子でご飯が食べられなくなった話

生まれた時からゲイだった よく「いつからゲイなの?」と聞かれる。あらためて聞かれると困るというか、いつからという明確なものがないので「生まれた時から」と答えているが、わりと正解なんじゃないかなーと最近思う。 自分は男が好きだと明確に意識し始…

神様、お願いします。

「自分が周りと違うことについて、違和感を持たなくなったのはいつから?」 そう聞かれて戸惑う。たしかに、昔は感じていた違和感は気が付いたら消えてしまっていた。これまでの俺はそれを当然のことのように受け止めていたけれど、よく考えてみればおかしな…

「悲しい」と「さみしい」

私は学生のころ先輩につれられて、とあるサロンに通っていた時期がある。そのサロンは商店街から少し外れたところにあるこじんまりとした店で、ドアのガラスから透けて見えるカウンターには店主の大柄な女性がいつもニコニコと笑いながら座っていた。大輪の…

夢を追う

だからさあ、俺は頑張ってたわけよ。なのにどうしてこうなっちゃうかなあ。俺の何が悪かったんだと思う。顔をアルコールで真っ赤にして管を巻く友人の言葉を聞きながら、自分も一口酒をあおる。そして今回の彼の落ち度を考える。特に思い浮かばないので「飽…

パーティーに僧侶がいない

久しぶりに書きたいことができたのでブログを開いたら、前回の更新が半年以上前だった上に前編で終わっていることに愕然とした。ていうかもう冬だ、あと一ヶ月と半月で今年が終わる! 思わず「昔はもっと季節が過ぎゆく速度が遅く思えていたのに」と口ずさん…

男子と触れ合う東京ツアー ―前編―

天気は上々、荷造りもバッチリ。 週末から東京へ三泊四日で旅行してきた。気になるイベントがあってどうしようか迷っていたのだが、我が人生の師と仰ぐ人に「お前もこいよ」と呼ばれてはせ参じたのだ。 ついでに友だちのところに泊まりにいく予定もたてて、…

笑っちゃいけないと思うほど笑いはこみ上げる

はっと目が覚めると午前5時だった。当然外は真っ暗だ。 ぬくぬくと布団に体をうずめながら「やれやれ、寝なおすとするか」と、瞳を閉じてはや1時間。 寝れない! 睡魔が帰ってくる気配なし! 最近明け方に目が覚めて、眠れずにそのまま起きるパターンが増え…

湯船にとける嫉妬心

久しぶりに湯船に湯をはった。実家で暮らしていたころは風呂を洗って湯をいれるのが私の家事のひとつだったし、家族がみんな風呂好きなので毎日のように湯船につかっていたが、一人暮らしを始めてからは月に一回あるかないかだ。 シャワーですませたほうがガ…

私と「マザーズ スピリット」

異文化交流バンザイ!! 今の私はこう叫びたい気分である。なんたってこの「マザーズ スピリット」は、辺境の部族の青年と日本人青年がいい感じになっちゃう物語なのだ。 マザーズ スピリット (Charaコミックス)エンゾウ 徳間書店 2015-11-25売り上げランキ…

カボチャの馬車で迎えて

人間の最大の矛盾は、小腹がすいたときにお菓子を食べたいけどそれをすると晩ごはんが入らなくなるところにあると思う。 空腹は最高のスパイス。耐えることでおいしく晩ごはんが食べられると思う一方で、お腹がすいたからちょっとなにかつまんでもと誘惑に負…

いざ行かん無我の境地

年をとると時間が経つのが早くなるというが、今まさにそれを体感している。 私二月の間なにしてたっけ。なんだかぼーっとしてたらあっという間に終わってしまったような。バレンタインにチョコを爆買いしてドカ食いしたところまでは覚えているんだが、次の瞬…

ほろ苦くても恋

バレンタインデイキッス、バレンタインデイキッス♪ ショッピングモールに流れる楽しげな音楽に合わせて、チョコレートを物色する人たち。バレンタイン間近のとある日、私はチョコレートを買いにきていた。 もちろん渡す相手は私自身だ。私は自分を愛している…

観光ポイントは現地男子

ここ二ヶ月ほど旅に出ていた。ようやく家に帰ってこれて、ホームの温もりをかみしめているところだ。私は一人暮らしなので家を温めていてくれる人などいないのだが、慣れ親しんだものに囲まれているというだけで心が落ち着く。 それでここのところ「やっぱり…

最強おばさん列伝

私が日本に生まれてよかったなと感じるのは、同じ出来事でも季節によってまったく違う姿を見せてくれる時だ。 例えば冬の雨上がりは、空気が冷たく澄んでとても気持ちいい。ひんやりとした空気を大きく吸い込むと、体の内側が洗い流されるような気分になる。…

世界は手の届く範囲に置いておきたい

とうとう冬がやってきた。布団の中がぬくぬくと居心地のいい季節だ。 あと少し、もう少しと布団にこもっているうちに起きなきゃいけない時間を過ぎて……なんて日常茶飯事なのではないだろうか。 もう目が覚めているのに、布団をめくったとたんにひんやりとし…