一人また一人と消えていく

 太陽はしぶとく夏にしがみついていながらも、風が着実に秋をはこんできているこのごろ。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 今日は季節はずれの、背筋が「ゾッ」とするお話をいたしましょう。

 

 それは私が友人とLINEでやりとりしていたときのことでした。

 友人は隣の県に住んでおり、日ごろ接点はございません。ですのでその日、ふと連絡をとろうと思ったのは、あるいは必然だったのかもしれません。

 

「はろー、元気にしてる?」

 

 私はそう切り出しました。

 

「元気だよ!霞はどう?」

「急に寒くなってきて、腹具合がとっても怪しいよ。窓開けて寝たからかな」

「どう考えてもそれっていうか、どうしてお腹が弱いくせにお前はそう無防備なんだよ」

 

 ええ、他愛ないおしゃべりです。くだらないおしゃべりを私たちはダラダラと続けていました。

 

「ところでさ、俺実はいまプチ旅行してるんだよね~」

「えっ、そうなの!?」

「そうそう、霞が住んでる街の隣にいるよ笑」

「言ってくれたら遊んだのに!一人旅行なの?」

 

 そう、ここで私は気づくべきでした。彼がわざわざ隣の県まで、一人で旅行してくるわけがないことに。わざわざ旅行するからには、それに値するなんらかの"理由"があるであろうことに。

 しかし気づかなかったからこそ、私はその質問をしてしまったのでした。

 

「うーん、一人じゃないっていうか、お泊まり、かな笑」

 

 う、嘘……でしょ?

 そんな、あなたそんな話いままでしてなかったじゃない。相手なんてぜんぜんいなーいみたいな話してたじゃない。そんな、気がついたら私一人置いてけぼりみたいな、そんな話って……!!

 嘘だといってよ、バーニィ!!!!

 

 もうひとつある。これはその事件があった夜の話しだ。

 私は昼間にうけた痛手を癒すべく、別の友人と電話をしていた。

 

「気がついたら友達が知らない男とできてたとか、俺だけ一人で置いてけぼりみたいなさあ~」

「そんなショック受けます?ww」

「受けるよ!ショックだよ!ただでさえ俺いまいい相手いないのに!!」

「そりゃ大変でしたね……あっ、ちょっとすみまs(ブツッ」

 

 ツーツーツー、と鳴り響く切断音。どうしたんだろう、用事かな。

 突然電話が切れてしまったので、すぐにかけなおしていいものか悩んでいたら、向こうから電話がかかってきた。

 

「あ、もしもし?いや~すんません」

「いやいや、オールオッケーよ。どうしたの?」

「あ~……いや~……その……笑」

「なになにww」

「ちょっと彼氏から電話かかってきて」

 

 ザ・ワールド!!時よとまれ!!

 え~ちょっと待ってどういうこと、ありえる?一日に別々の二人からいい相手ができたことを告げられてしまうとかありえるの?

 反射的に時を止めて冷静さをかきあつめ、現実に戻る。

 

「そうなんだ~。そっちの電話でなくて大丈夫なの?」

「どうだろ。いちおうかかってきたんだし出ないとマズいかな」

「俺のことは気にせずいってきなよ!また話そう!」

「はーい、ありがとうございます!」

 

 電話をきってから真っ暗になった画面をみつめること数秒。手から携帯は滑り落ち、私は白目をむいて泡をふきながら息を引き取った。

 

 おわかりいただけただろうか。

 気がつけば友人たちが着々と歩みを進めるなかで、つれづれなるままに日々を送ることの恐怖を。気がつけば周りには誰もおらず、置いてけぼりにされてしまっている恐ろしさを。

 次にこんな出来事が襲い掛かるのは、あなたかもしれない……。

 

  いつの間にやら周りに春が訪れているのに、私は暦どおりに秋冬を迎えるようです。秋→冬→秋→冬のループから抜け出せないのだが、もしかしてタイムリープものの世界にとらわれてしまっているのだろうか。

 明日は明日の風が吹く、ただし木枯らし、みたいなっ!

 

 それではまた明日でござる。

 ドロン。