愛のレッスンABC(A君とB君の場合)

 「愛されるのには練習が必要だ」というのが私の持論である。

 例えばここに二人の男の子を登場させよう。

 A君はクラスの中心的人物でみんなに好かれ、失敗しても笑ってすまされてしまうお調子者だ。

 一方のB君はちょっぴり引っ込み思案で、失敗すると「大丈夫?」と心配されてしまう性質である。

 A君はみんなに愛され、そんな風に自分を愛してくれる彼らを嬉しく思っている。

 だから自分からも相手を好きになることに屈託が無い。

 「好きになってもらったんだから、自分からも好きになるのって当たり前じゃーん」なんて言っちゃうタイプだ。

 B君はあまり好かれたり担がれなれていないから、そういうときにどう反応していいか困ってしまう。

 自分から相手のことを好きになっても、いまいち態度に表せず、話しかけられないと話せない。

 「自分なんかに懐かれても困るよな」なんて、曖昧な笑顔が切ないぜ。

 もちろんこれが全てのパターンではないが、ありがちなパターンであることは間違いない。

 好かれていれば多少の失敗には目を瞑ってもらえるだろう。

 A君は大いに失敗し、時には笑われ時には心配されながらも、それによって学びを得ていくことだろう。

 そのうちにどこまで人に近づいても問題ないか理解し、他人と気軽に距離を縮められる人物になるのだ。

 しかしB君はただでさえ好かれている人が少ないのに、失敗してはいけないと考える。

 そのため失敗からは身を遠ざけ、無難な人物になっていく。

 必要以上に好かれることがないため、好かれることに慣れないままで、人間関係に臆病になるかもしれない。

 こんな風に考えていくと、「愛されるのには練習が必要なんだなあ」という結論に至るわけである。

 もちろん今私が思いついたのが全てではない。

 好かれるお調子者が遊び人になることも、臆病な彼が人に好かれる経験を経て明るい人気者になることもあるだろう。

 しかしまあそんな例外は置いておこう。よっこらしょと。

 今はこの二つのパターンの彼らがどのように出会い、関係を発展させていくのかについて思いを馳せようではないか!

 まず、モーションを起こすのはきっとA君からだろう。B君はシャイなあんちきしょうなので、A君に行動を起こしてもらったほうが手っ取り早い。

 関係性は……そうだな、昔から母親同士が仲良しで遊んでいたということにしよう。

 ちょっと臆病で「そんなこと危ないよ」としり込みするB君を、A君が引っ張りまわす構図だ。

 気ままで勝手なA君を苦手に思いつつも、そんな自由なところに惹かれてしまうB君。ああ、シャイボーイの一途な片思いなんてステキじゃない。

 家が近所なこともあり、腐れ縁で小学校、中学校と付き合う。もちろん部活はA君に誘われるがまま同じものをするのだ。

 野球かな?サッカーかな?それともバスケットボールかしら?

 高校も結局おなじ学校に進学する二人だが、B君にも自我が芽生え、ここでA君とは違う部活に入ってしまう。

 内向的ながらも体を動かすことが好きなB君は、陸上部でストイックに自分のスコアを伸ばすことに打ち込み始める。

 A君は自由闊達にチームプレイだ。やはりサッカーがいいかしら。

 クラスも分かれてしまい少し疎遠になってしまう二人だが、帰るときだけはいつも一緒だ。

 先に部活が終わったほうが、靴箱か教室で待っている。

 夏も終わりに差し掛かって、夕暮れがはやく訪れるようになるころ。

 B君は教室で自分を待つやけに大人びて、でも少し寂しそうなA君の横顔に気づく。

 なんとなく入り口で立ち尽くしていると、自分を見つけたとたんにその表情が嬉しそうな笑顔に変わるのだ。

 さぁ胸を打ちぬかれるB君。まぶたを閉じれば彼の笑顔が蘇る。

 今までずっと傍に居た男の子に感じてしまったトキメキに、自分でも驚き桃の木山椒の木だ。古いか。

 B君は今まで引っ込み思案で、A君のおかげで輪には入れていたものの、恋の経験なんてゼロだ。

 気になる女の子はいたけど、話しかけるなんてとてもとても。見送り三振でバッターアウトである。

 人に恋することに慣れていないB君は、幼い頃からの友人Aに感じてしまった感情を認められない。

 彼はある日、耐えられずにA君をおいて先に帰ってしまうのである!ああダメよ、A君がどれだけ傷つくか!

 さて一方の取り残されたA君。待てど暮らせどこないB君に、痺れを切らして部室に向かえば、そこはもぬけの殻。

 「オレなんかしちゃったかな……」と、不安もここに極まれりである。

 そして次の日、普通に学校にくるB君。もちろんA君は朝一番に彼に詰め寄る。

 「お前昨日どうしたんだよ!さきに帰っちゃってさみしかったんだぞ!」

 「や、別に……ごめん、ちょっと用事あってさ」

 「それならそれで先に言えよなー、今日は大丈夫なん?」

 「今日も無理、かな」

 「そっかー。じゃあいっしょに帰れるようになったら教えろよな!」

 そうして別れたはいいもの、その週も次の週も、B君がいっしょに帰ってくれることはなかった。

 いままでそんな風に距離をとられたことのないA君は、Bが何を考えているのか気になって仕方なくなる。

 ふ、二人の関係、これからいったいどうなっちゃうのーっ!!

 ふぅ(額の汗をぬぐう)。

 思いついたら止まらなくなって、こんな時間(現在深夜1時39分)にブログを書いている次第だ。

 愛されることになれているからこそ距離をとられて戸惑うA君と、愛することになれていなくて距離をとってしまうB君。

 明日は間違いなくこの妄想で楽しめることだろう。

 ここまで読んでくださったみなさまは、きっとこれから彼らがどうなっていくのか気になっていよう。

 どうか気になりまくり、彼らのこれからを想像してあげてほしい。

 そしてステキなアイデアが浮かんだら、ぜひともどこかで発信してほしい。

 世界はホモを必要としているのだから。