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いざ行かん無我の境地

 年をとると時間が経つのが早くなるというが、今まさにそれを体感している。

 私二月の間なにしてたっけ。なんだかぼーっとしてたらあっという間に終わってしまったような。バレンタインにチョコを爆買いしてドカ食いしたところまでは覚えているんだが、次の瞬間ひな祭りを迎えていた。タイムリープしていたのかもしれない。

 

 考えてみれば時間がだんだん早くたつようになるのは当たり前だ。10歳のときの1年は人生の10分の1だけど、20歳になれば1年は人生の20分の1。体感時間はどんどん短くなっていく。

 気が付いたら年取って死んでるんじゃないのかと思うとわけもなく焦るが、焦ったところでどうできるわけもなし。開き直ってお腹いっぱい食べてぐっすり眠る毎日だ。

 

 最近はとある本に進められて瞑想をはじめてみた。といってもよくある縁側で座禅を組んで、時々お師匠に肩をベシンとやられるような本格的なやつではない。ベッドの上であぐらをかいて、タイマーがなるまで呼吸に集中するだけだ。

 まあこういうのは場所とかよりも心持が大事だというし、これが実際面白い。

 

 皆さんもやってみればわかると思うのだが、人間の脳みそはすごい勢いでいろんなことを考えている。聞こえた音から連想したり、昔のことを思い出したり、思考はとめどなく流れ続けている。

 瞑想というのはそういう頭の中のあれこれをいったん止めて、空白にするという作業なのだ。これがめっぽう難しい。

 なにしろ私の脳みそときたら、今日の晩ごはんや面白かった本や昔あった胸ときめいた出来事なんかを、次から次に思い浮かべているのだ。呼吸に集中できるのはせいぜい5秒か10秒で、気が付いたらなにか考え事をしている。

 

 私が読んだ本によると、瞑想というのは集中が乱れている自分に気づき、少しずつ改めていく行程のことらしい。だから初めは呼吸に集中できず考え事ばかりしてしまっていても、それに気づくことができればいいのだそうだ。

 そういう意味では効果てきめんだ。自分の頭の中にこんなにもいろんなことが詰まっているということに気づいたのは、人生初である。

 

 考えてみれば集中が持つわけもないよな。

 だって私の頭ときたら、ほっとくと「吸って……吐いて……吸って……吐いて……こうやって集中してるときに不意に後ろから恋人に抱きしめられて動揺して集中が乱れてしまった挙句『いま瞑想してるんだからやめろよな!』って真っ赤になっちゃう男の子かわいい」なんてすぐに考え出すんだから。

  中学生や高校生のころとくらべて集中力が落ちてしまったのは、いろんなことを経験して考え事の材料が増えてしまったからかもしれない。生きれば生きるほど雑念が増すって、人間は難儀な生き物だなあ。

 

 瞑想の話を友人にしたところ、その友人が海外旅行の最中に修行場に通っている人と知り合った時の話をしてくれた。

 なんでもその人によると、瞑想していてある一定の段階を迎えると世界のすべてが喜ばしく幸福に思えてくるそうだ。その時の気分というのは幸せそのもので、世界には美しいものと肯定しかないような気がするらしい。

 そしてその次に、あらゆる苦しみと不幸が襲い掛かってくる。津波のような悲嘆が押し寄せて心は千々に乱れ、世界そのものが憎くなるそうだ。

 その先に無我の境地がやってくる。明鏡止水と言えばイメージがわくかもしれないが、そこにたどり着くと心の揺らぎが消えてしまうそうだ。ううむ、そんな境地が実在しているのだろうか。

 

 また別の人は、ある日突然「自分の体の中の悪い場所が光って見えるようになった。日本に戻って治療する」と言い出したそうだ。

 め、瞑想にそんな効果が!?もはや超能力の域だと思うのだが、超能力も人間の眠っている能力を呼び覚ましているだけだしあり得ない話ではないのか?

 瞑想の謎は深まるばかりだ。

 

 私は今のところ、そんな人知を超えたところにたどり着きそうな気配はない。私の俗世にまみれた脳みそのしわしわには、マーラが住み着いているようだ。

 自分の思考がいかにブレブレで頼りないものかわかっただけでも儲けものである。

 

 だけどもしも無我の境地なんてものに達してしまったら、道行く男の子にときめいたりBL本を読んで憤死しかけたりすることもなくなるのだろうか。

 自分からそんな感情の揺らぎが消えてしまうことは考えづらいのだが、もしかしたらそういうこともあるかもしれない。それはさみしいけど、やるべきことに集中できるようになると考えたらいいのか…?

 

 自分の思考が乱れはわかったので、これからは集中力が高まるといいなあと思う。

 ひとまずはそこを目指して瞑想を続けるつもりだ。無我の境地に達する前に成果を報告できればいいなと思う。達してしまったらパソコンを開くことすらしなくなりそうだからな。

 読者のみんなも、レッツ瞑想!