岸本さんの愛の深さにシャッポを脱ぐ

 見事討ち死にを果たした。

 螺旋丸にハート(心臓)をぶち抜かれ、木の葉隠れの里の大地を全身で味わっている。うおお、ボルト、ナルト~、君たちはどうしてそんなにかっこいいの!君たちの魅力に私の全身はバイブのように震えているぞ!

 

 ピンポンパンポン♪

 本日のエントリは、映画「BORUTO」のネタバレを含むため、ご覧になる方はどうぞお気をつけください。

 

 

 

 ほんの数時間前に映画「BORUTO」を見てきた。みなさんご存知「NARUTO」の続きというか、ナルトが火影になったあとの話だ。

 もともとナルトは好きだったのだが、アニメとか見るほどじゃないしな~と思って放っていたら友人に誘われたのだ。いい評判を聞いていたのでそんじゃあ観にいくかと重い腰をあげた次第である。

 そしてナルトとボルトの螺旋丸にやられた。親子パワーで威力も二倍、私は泣くやら笑うやらで全身から汁を滴らせてしまった。

 

 あらすじとしては、中盤まではちっとも自分をかまってくれないお父さん(ナルト)に複雑な気持ちを抱く息子(ボルト)が、お父さんにいいとこ見せようとする話だ。そこに悪い大人がはいってきて、ボルトはいいように利用されてしまうのである。息子の父親に対する複雑な感情を利用するなんて汚いぞ!しゃーんなろー!

 中盤以降はどこかからきた悪いやつらが暴れまわって、それをとめるためにナルトたちがバトルをする。「それって忍術なんですか?」と思うようなスーパーな必殺技が飛びかうスペクタクルだった。少年ハートがうずきまくって、家に帰ってから「螺旋丸!!」とマネをしてしまうこと必至だ。壁には穴をあけないようお気をつけください。

 

 とにかくこのボルトが、ボルトがかわいいんだ…!

 

 今日は妹の誕生日だ。母ちゃんはご馳走つくってくれるし、ケーキだってある。珍しくクソ親父も帰ってきて、妹もすごく喜んでた。

 なのに、それなのに…!クソ親父は影分身で、本物のほうは火影の部屋で仕事だ。

 クソ親父は火影とかいう里で一番偉い人をやってて、机の前で威張ってるばっかりだ。家になんて帰ってこないし、たまに帰ってきたと思ったら影分身。俺はいいんだ。でも妹にまで寂しい思いさせて、それで父親なんていえるのかよ!「里のみんなが家族みたいなもんだ」って、それで本物の家族のことちゃんと見ねえで、サイテーのクソ親父だ。ちっとは俺たちのことちゃんと見てみろよ、クソ親父!!

 

 ボルトの内心を日記風に表現してみた。ボルトはナルトがちっとも父親らしいことをしないせいで、すっかりひねくれてしまっている。だけどボルトはほんとうは、父親にちゃんと見て欲しいだけなのだ。そんな彼の激烈かわいいエピソードがある。

 ナルトは中忍試験(ワンランク上の忍者になるための試験)でボルトが予選を通過するごとに声をかける。

 一度目はメールで「よくやったな、次も頑張れよ」と激励する。それに対してボルトは目を輝かせながら、「んだよ、メールですませるとか、会いにくるくらいしろってばさ」と素直じゃないご様子だ。しかし嬉しさに緩む頬を隠せていない。あまりのツンデレっぷりに過呼吸になりかけ、周囲に怪しまれないよう必至で呼吸を整えた。スーハースーハー…。

 

 二次予選も無事に通過し、本戦出場が決まるボルト。しかし彼は悪い大人に騙されて、ズルをしていた。決まり悪い思いでさっさと部屋に閉じこもってしまうボルトのもとへ、ナルトがやってくる。

 「と、父ちゃん?なにしにきたんだよ」ボルトは困惑するが、ナルトもどうお祝いを言えばいいかわからず沈黙してしまう。ここの描写がすごくいい。

 ナルトは生まれてすぐに両親を失い、子ども時代をずっと一人ぼっちで過ごす。家族といえる存在を持たずに成長したのだ。だから家族に対してどんな風に声をかけていいかわからない。その微妙な葛藤が、目をそらしたり関係ない写真を持ち上げてみたりする仕草にあらわれていた。

 そしてついに口を開いたナルトが言った言葉は、「よくやったな」という簡単なものだった。ボルトも拍子抜けして「なんだよ、それだけかよ」と返す。

 「それだけじゃないよ、大事なことだ。大事な、大事なことなんだ」と自分にも言い聞かせるようにナルトは呟く。それから「シカダイ(ボルトが戦うことになる相手)なんかに負けんなよ」と拳を突き出す。

 あああもうナルト!!この口下手さんめ!!でもお前の気持ちはボルト(とスクリーンのこっちにいる私)にビシンバシン伝わってるわよ!!

 

 しかしボルトはズルをしている引け目から拳をあわすことができず、「負けるわけねーだろ」と笑ってみせる。ナルトは違和感をおぼえるが、「そうか、頑張れ」と言い残して去っていく。

 問題はここ!このシーン!

 ナルトが去ったあとの一人の部屋で、「ふ…くくっ…なんだよ、それだけならメールでいいだろ」と 笑いを抑えられずに憎まれ口を叩くボルト。そしてそのあとついに堪えきれなくなったのか、ベッドの上でジタバタ!嬉しくて仕方ないんじゃねえかこいつかわいいなあもう!

 

 まずい、このままではボルトがかわいかったという話で終わってしまう。あああボルトきゅん私にもあなたの螺旋丸をぶち込んで……。

 

 

 

 とまあ、果てしない萌えポイントだらけの映画だったのだが、語っているとキリがないので話をうつそう。

 

 この映画からは、岸本さんのNARUTOという作品への愛情がものすごく伝わってきた。なんでも岸本さんは、映画について自分で絵を準備したりしながら「このシーンは何分にいれてほしい」「ここはこういう気持ちだから、こう描いてほしい」と、すごくたくさんの注文をつけたそうだ。その激しさたるや、監督がぶっ倒れて三度も救急車で運ばれてしまうほどだ。

 岸本さんの、キャラクターデザインから脚本まで全てを手がけようという熱意や、最高のものをつくりたいという思いを考えると、それだけで涙が出てくる。映画自体からも「人ってのはこういうもんだ」という岸本さんの哲学が伝わってくる。人は人と関わりながら、自分自身の体と頭をつかって自分を磨き上げていくものだと教えられた。

 

 私はいつも映画のスタッフロールが流れてくると切なくなる。

 たくさんの名前が流れてきて、その人たちみんながよいものを作ろうと頑張っているという事実が心に迫るのだ。一方で、ネットの隅っこでちまちま文を書いたりしながらのんべんだらりと生きている自分が悲しくもなる。

 私がこうしてブログを書いている間にも、なにか物語をつくろう、喜びや感動を作り出そうとしている人がいるのだ。なんだかそういうことを考えると、なにかしなきゃという気持ちになる。

 

 そんな私に主題歌「ダイバー」の歌詞が突き刺さる。

 

 「強くなりたいと願えば願うほど 空回りしてしまう」

 「嫌になって苛立って うまくできない自分がいて ダメだって立ち止まってしまう」

 

 しかしいつまでも蹲っていたって仕方ない。悪い大人にそそのかされて便利な道具に頼ったボルトは、それをしこたま後悔することになるのだ。何かを変えたいなら自分自身で努力して変えていくしかない、そうやってナルトは強くなってきたし、ボルトもそれに気づいてこれから強くなっていくのだ。

 ボルトー!君の素直な心を私は愛しいと思うぞ!そして私もかくありたい!

 

 ボルトのかわいさに萌え、ナルトのかっこよさに惚れ、岸本さんの物語への愛に胸をいっぱいにできる。

 明日一歩を踏み出したい、変わりたいあなたにオススメできる映画だ。