読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

勝ちの裏には負けがある

日常

 あ、ありのまま、今おこったことを話すぜ!

 「オレは夜ネトゲをしたり、マンガを読んだりしていると思ったら、外から朝日が差し込んできた」

 な、何を言っているのかわからねーと思うが、オレも何をされたのか分からなかった。頭がどうにかなりそうだった……。

 催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしい何かの片鱗を味わったぜ……。

 ジョジョの第三部から、ポルナレフ先生にお越しいただきました。私の夜はどこ行った?

 生活の乱れが加速してきて、いよいよいつ起きていつ寝ているのかも定かでなくなった。

 えーっと、とりあえず昨日のことを思い出してみよう。

 朝の七時ごろに寝て、十二時半過ぎに待ち合わせの約束をしていた友人に起こされて、遅刻しながらも向かったものの体調がグロッキー。

 そのままいっしょに映画を見て、家に帰ってきて六時前にその日初めての食事をし、七時から九時まで寝る。

 おき出してからおなかがすいて買い物にいって、シュークリームとエクレアを買い、エクレアを食べて風呂に入る。風呂上りにシュークリームを食べて、気がついたら朝だった。

 もしかしたら私は、キングクリムゾンの力で夜を丸ごと奪い取られたのかもしれぬ。キングクリムゾンがなんだかわからない方は、ジョジョの奇妙な冒険第四部を読もう!

 結局徹夜してしまっているので、もしも今日日付が変わるまでに寝なければ、二日間でトータル十時間ほどの睡眠時間ということになる。私の生活はいつの間にこんなに歪んでしまったのだろうか。

 なんとか生活習慣を直そうと、部屋掃除をしたりしたのだがな。為すべきは部屋掃除ではなく、睡眠時間の改善だ。

 部屋掃除をした理由は、生活習慣だけではない。なんと我が家にハエがでおったからである。

 あのブンブンと羽音とたてながら飛ぶ虫が、家の中に発生してしまったという絶望。お分かりいただけるだろうか。外から入り込んできたのだと、信じたい。

 とにもかくにも、奴らが湧いてきそうな場所から掃除しようと、まずは台所の排水溝の掃除を始める。たまっていた汚れが出るわ出るわ、いっそ心地よいほどだ。

 キッチンハイターを吹き付けて、次は風呂場の掃除にうつる。

 歯ブラシをジャッコジャッコと排水溝に突っ込みながら、頭の中ではくだらない妄想を垂れ流す。

 「ほら、お前の汚いアソコ、よく見せてみろよ」

 「や、やだっ!見るなよっ!」

 抵抗するのを無視して、ゆっくりとその覆いを外す。内側からはたっぷりとたまった汚れが出てきた。

 「こんなに溜め込みやがって、ずっとこうしてほしかったんじゃねぇのか!?あぁ!?」

 そう言うと私は、歯ブラシを中に突っ込み激しく出し入れをした。

 「はっ、だ、だめ、そんなされたら、で、出ちゃッ……!!」

 「さっきまで嫌がってたクセに、ずいぶんいい声出すじゃねぇか。よくなってきたんじゃねぇのか?」

 「くっ、そ、そんなこと……」

 口先では抗いつつも、少しずつでてくるそれは、もう隠しようもなく溢れてきていた。

 「おら、もう限界なんじゃねぇか?どうしてほしいか言えよ、言えばそうしてやるぜ?」

 「うっ……く……。……してくださ……い……」

 「あぁ?なにしてほしいって?」

 「オレの溜まってるもの、ぜんぶかき出してくださいっ!!」

 その言葉を聞くと同時に、私は熱いものを注ぎ込みながら、引きずり出すように歯ブラシを動かす。

 「あぁっ、いいっ!!出ちゃう!!ヨゴレ全部出ちゃうのぉ!!」

 もはや恥らうこともなく声を上げる排水溝に、真っ白なカビキラーをぶっかけて、私はフィニッシュした。

 なんというか、人として終わっている。「オレたち、きちまったな。きちゃいけないところまで」って感じだ。

 いっそこのまま行ける所まで行ってみようかとも思ったが、たどりつくのは間違いなく袋小路なんだよなぁ。

 それからブログを書くたびに、生活習慣がヤバいといい続けているのに、一向に改善の兆しが見られない。改善する気がないわけではないのだが、目の前の誘惑に負けてしまう。

 こんなに心が弱いようでは、社会に出てもとてもやっていけないと思うのだ。ここは一つ出家して、心を鍛えるところからはじめたいところである。

 あ、でも出家したらホモ漫画も読めないし、うかうか妄想もできないし、アニメも見れないや。やっぱりやーめた。

 煩悩の塊とは私のことだ。

 この煩悩を創作活動に向けるのはどうだろうか。無駄なエネルギーを消費し、一部の人の需要を満たせる。最高の発散方法だ。

 ここは一つ漫画でも書いてみよう。まずは漫画を読んで漫画の描き方を勉強しよう。あ、でもわりと普段から読んでるな。まぁいいか。

 最近私の中で大ヒットしているのは「ハイキュー!!」というバレー漫画だ。アニメにもなっているし、知っている方は多いのではないだろうか。

 一言で言えば、正しいスポーツ漫画である。

 正しくないスポーツ漫画ってなんだって?そりゃもうボールが消えたり、登場人物が特殊能力をもっていたり、空間を削り取ったりしないスポーツ漫画である。

 「ハイキュー!!」のいいところは、登場人物たちのスポ根っぷりもさることながら、一つ一つのキャラクターがかなりしっかり作られているところだと思う。作者の愛を感じる。

 彼らが「なぜ」バレーに夢中になるのか、「どうして」負けたくないと思うのかが丁寧に描かれていて、読んでいて思わず涙を流さずにはいられない。

 中でも印象的に感じたのは、主人公たちのチームだけでなく、負けた側からの視点があることである。

 大会で勝ち抜くチームがあるということは、その影で勝ちあがれなかったチームが存在するということだ。

 そしてスポーツ漫画においては、「勝つ」のも「負ける」のも、主人公たちのチームであることが多い。涙を呑んで退場したチームにだって、確実にドラマはあるのだ。

 そこをきちんと捉えている古舘春一先生は、すごいお方だ。いつだって勝利の影には敗北がある。勝利の光で、その敗北が塗りつぶされてはならない。

 本編のネタバレになってしまうのだが、私の大好きなセリフがある。負けたチームの主将が、主人公たちのチームに、「勝てよ」と伝えながら、独白する。

 多分、こんな風にあっけなく"部活"を終わる奴が、全国に何万人と居るんだろう。

 何試合もある予選を全部勝ち抜いて、全国へ行って。

 これが物語だとしたら、全国へ行く奴らが主役で、俺達は脇役みたいな感じだろうか。

 それでも――

 おれたちもやったよ、バレーボール。

 古館さんの眼差しは主人公たちだけでなく、たった一話にしか登場しないような脇役にも注がれている。みんなが平等にバレーボールをプレイしている。

 だからこそ、私は「ハイキュー!!」という作品を愛す。

 ところで私のことにも、どなたか眼差しを注いでくれませんか?

 まずは正しい生活を送れるように、叱咤激励するところからお願いします。