憂いを帯びたその瞳が好き
最近、生活習慣が歪みすぎていてマズい。4時に寝て昼ごろに起きるような生活をしている。
では4時まで何をしているのかといえば、大体ゲームをしているかマンガを読んでいる。
昨夜も、深夜までネットゲームをしていて、見事に夜更かしをしてしまった。寝たのは4時半ごろである。
布団にはいってから寝着くまでが長い方なので、おそらく実際に眠れたのはもう少し遅いだろう。夜更かしはお肌の大敵なのに!
見せる相手もいないので、それはまぁいい。
今日は友人と約束があったので、せめて10時には起きようと目覚ましをセットして寝た。目が覚めたのは11時半だ。
待ち合わせは12時。一瞬にして絶望に叩き落とされる。
男子に生まれてよかったなぁと思うのはこういう時だ。化粧だの着替えだのに時間をとられないからな。おしゃれ男子ならきっと髪の毛をセットしたり、顔を洗って化粧水をつけたりとするのだろうが、あいにくそんなシャレオツな行為とはとんと縁がない毎日だ。
とりあえず寝癖だけ直して、パジャマを脱ぎ捨てながら前日に選んでおいた服を着る。寝坊に対する対策は万全である。
寝坊しない努力?そんなものは捨ておけ。
近所のスーパーで待ち合わせをしていたのでそこまで向かうと、友人のなっつんとM先輩と森ちゃんはすでについていた。
なんのための待ち合わせかと言うと、動物園に遊びに行くのだ。なにを隠そう私は大の動物好きである。触れ合いたくてたまらない。
待ち合わせが12時ということもあって、昼ごはんを食べてから動物園へ向かうことに。車の中であれがいい、これがいいと騒ぐ。
私は生活習慣が乱れすぎていて食欲がまったくなかったので、できれば軽いものがいいと提案。しかし女性の中に一人ぼっちで男子がまざってしまうと、得てしてその意見は無視されてしまうものである。
ハンバーグが食べたい、いやカレーだと実に楽しそうである。いやぁ、楽しそうだなぁ。みんなが楽しそうなら私はもう食べなくていいかなぁ(願望)。
結局なかなか決まらないので、M先輩のツルの一声でラーメンに決定した。私は結局ほとんど食べられなかったので、残りは友人たちが食べてくれた。
隣の席で幼女がでかい器にがっつりとしがみつき、顔面をスープにつけるように食べていたのが印象的であった。幼女よりも食べない男…。生活習慣を改善しよう。
腹ごしらえを済ませたところで、いざ動物園に突撃である。実にすばらしい場所であった。
まず出入口では、コモンマーモセットという手乗りサイズのお猿さんがお出迎えをしてくれた。こういう珍しい動物と触れ合う機会はめったにないので、俄然盛り上がる私たち。
「すごい!ちっちゃい猿がおる!」
「えーめっちゃかわええ!」
「触ってええんかな!?」
「はい、どうぞー(飼育員さんの声)」
「やったー!」
入口ですでにこんなにはしゃいでいる客はほかに居ないようだった。年をとっても子ども心を忘れない私たちである。
大分出身の森ちゃんは、猿にまとわりつかれている私を見て、「あんた猿にすかれちょーばい」と非常にクールなコメントを残してくれた。
中に入るとたくさんの犬たちが出迎えてくれた。中でもかわいかったのは、モフモフのポメラニアンである。三日ほど前に動物園にきたばかりだが、人によく慣れていて頭をなでると自ら体をよせてきてくれた。
「ハフッ、ハフッ」と嬉しそうに尻尾をふりながらつぶらな目で見上げられると、どうにも抗えない魅力を感じる。でへーっと顔中を撫でまわすことひとしきりである。
他にも柴犬やトイプードルやコリーなど、いろんなワンちゃんが居た。とりあえずどの子にも一通りタッチしてきたが、とても愛想がよくて驚いた。彼らはそういう風にしつけられているのだろう。
それから園内をフラフラと歩いてまわったのだが、驚いたのはほとんどの動物に触れるようになっていることだ。動物園とは動物を眺めるだけで触ることはできない場所だと思っていたので、嬉しい驚きである。
それはいわば、おさわり禁止だとおもっていたクラブに行ってみたところ、むしろ女の子たちの方から触りにきてくれたような気持ちだ(ゲス顔)。
というわけで様々な動物にお触りしてきたわけだが、中でも私のお気に入りはロバである。彼らの憂いを帯びた瞳や、ずんぐりむっくりした体型がたまらない。
なんというか彼らは、全てを知っているのにそれを隠さなくてはいけないというような、とぼけた悲しみを背負う表情をしている。あの三角形の瞳に、胸がキュンと締め付けられるのだ。恋かもしれない。
ロバというのは、なんでも五千年くらい前にアフリカで家畜化された動物らしい。今はハワイ島に野生のロバがいるようだ。
私はパスポートも持っていないし飛行機も苦手だが、野生のロバに会いにハワイ島までいってみるのも面白そうである。
ロバの後は、乗馬体験をさせてもらった。ちょっとした囲いの中を、馬に乗ってまわるというものだ。
ところでみなさんは、現在サンデーで連載されている「銀の匙」という漫画をご存じだろうか?
中学時代は進学コースに居たガリ勉の八軒が農業高校へ進路を変え、そこで生きることや命の大切さについて考えるというのが大ざっぱなあらすじである。素晴らしいマンガなので、ぜひとも読んでいただきたい。
八軒は農業高校の馬術部に入る。その名の通り、乗馬をしたり馬に乗って障害物を乗り越えるコースを走ったりする部活である。
その部にはいった八軒が初めて馬に乗るシーンはとても感動的で、それを読んで以来「私も馬に乗りたい」と思っていたのだが、その思いがかなった瞬間であった。
乗ってみた感想としては、普段よりも視界がずっと高く広くなってとても気持ちよかった。世界がスッと広がるような感覚だ。
足の下に確かに動物の息遣いがあるというのは、なにか安心できる気がして心地よかった。
最後は駆け足で走ってもらったのだが、お尻がぽこぽこ跳ねてしまって大変だったが、とても楽しかった。桃尻というのは馬に乗った時にお尻が跳ねてしまうことを言うらしいのだが、さもありなん。
駆けている馬の上でお尻を落ち着けるのは、かなり難しそうである。ジョッキーの人たちはほんとうにすごい。私などは運動音痴なので、もしも本気で走られたりしたらあっという間に振り落とされそうだ。
他にも羊やニホンザルに、ヤマアラシやガチョウなど、いろんな動物がいて非常に楽しい場所であった。カピバラの体毛は案外固く、撫で心地がいいとは言い難かったが、彼らのきょとんとした表情も大変愛くるしいものである。
園内を一通りまわり終えて。入場門の近くにいる犬たちと戯れていると、最初にかわいがっていたポメラニアンの女の子が散歩に連れて行かれたらしく、ちょうど帰ってくるところであった。実はとなりに繋がれていたポメラニアンの男の子はお兄ちゃんで、非常に仲睦まじい様子ではしゃぎまわっている。
しかし心なしか、お兄ちゃんの様子がおかしいような?
眺めているうちに、お兄ちゃんはなんとマウントポジションをとり、カクカクと腰を振り始めた。お、おめぇさん、実の妹に手を出すたぁいい度胸じゃねぇか…。
大きな動物ばかりの園内で種としての本能に目覚めたのか、いきなり野生をむき出しにしてくれた彼のサービス精神に乾杯である。
と思ったら、今度は後ろの柵の中でゾウガメがマウントポジションを!?そばに繋がれていたロバが、ただでさえ悲しげな表情をさらに迷惑そうにゆがめる。
彼らの行為は大変スローな上、乗っかっている雄の方はひとおしするたびに「ヒィーッ、ヒィーィ」と謎の音をたてる。観ているこっちがいたたまれない。
というわけで、最後までドラマ続きの動物園内紀行であった。動物たちがものすごいサービス精神には脱帽である。
彼らには大変悪いのだが、残念ながら私は人間以外の濡れ場には興味がないのだ。そういう行為は人目につかない場所で行いたまえ。