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三次元の男同士に現を抜かす

世の中には開いてはならない扉というのがある。それはもう歴然と存在している。私は今日、そんな開けてはいけない扉を開いてしまったのだ。

開いてしまった扉。それはHM(Homo Movie)だ。つまりホモの映画である。こんなものが現実世界に存在しているとは思っていなかったので、ものすごい衝撃を受けた。

どのくらいの衝撃かというと、大好きな歌手のライブに行ってみたら、そのアーティストが頭を振った瞬間にカツラが飛んできて、自分の顔にぶちあたるような衝撃である。なにか飛んできたと、手に握っているものを確認したら、髪の毛の束なのだ。そして舞台上には丸坊主の愛しいあの人が…なんて恐ろしい…。それぐらいの衝撃だったのである。

というわけで、私は驚きつつも、こんなものが存在していたのかと、喜び勇んでホモ映画を見たわけである。その名もズバリ、「純情」。

ご存じない方のためにあらすじを公式サイトから拝借してこよう。

ライターの戸崎圭祐は、取材で偶然、高校時代の初恋の相手・倉田将成と再会する。 覚えていないだろうと戸崎は思ったが、倉田は戸崎のことを覚えていた。その夜飲みに行くこととなり、当時の気持ちを暴かれた戸崎は、戸惑いながらも倉田に抱かれてしまう。 一度きりだと思ったのに倉田は何故か戸崎との関係を続ける。強引かと思えばやさしい仕草も見せる倉田に、戸崎はますます惹かれていく。 そんな中、戸崎の元恋人宮田一臣の存在を知った倉田には戸崎に対する想いの変化が現れて…!?

純粋に人に恋するとはどういうことか、そして、本当に好きになったとき、人はどんな気持ちのなるのか。恋するもどかしさや優しさを描いた、ボーイズラブ映画の決定版です。

この圭祐くんの役をしているのは、栩原楽人という俳優なのだが、正直に申し上げてドストライクである。少し癖のついた髪の毛に、犬っぽい表情。つぶらな瞳と、物を両手で持ったり、微妙に体をねじらせる愛くるしい仕草…役作りの賜物かもしれないが、正直に申し上げて卑怯と言わざるを得ない。

そして体も決して貧弱ではなく、つくべきところに肉のついたイイ体で…グヘヘヘヘ。思わずニヤリと邪悪な笑みを浮かべてしまうのも仕方ないと言えよう。

以下はネタバレを多分に含むので、そこのところご了承くださいませ。

まず特筆すべきなのは、開始二分でいきなり圭祐が半裸になる。本当にいきなりのことで動揺した私は、思わず一時停止をして彼のお乳首様を眺めまわした(全然動揺してない)。

もちろん流れの説明もあるのだが、「偶然再会した夜にホテルに行っちゃう」という展開の速さには、思わず置いてけぼりである。

しかしそこはご都合主義の世界、おそらく何事も無くホテルに入り、何事も無く圭祐の中にも入れたことであろう(ゲス顔)。しかしこの圭祐の、ベッドの上で上半身だけを起こした姿がやけに扇情的である。胸元に下げた黒い紐のネックレスがオシャレで、全裸よりもいっそういやらしい。

相手役の将成は、「またな」と意味深な言葉を残していくのだが、自宅でモヤモヤと悩みこむ圭祐。録音した将成の声を聞いて唸ってしまう姿が、片想いをしている男子がいかにキモいか表現していて、監督の方が目の前に居れば「グッドジョブ!」とビシリと親指を立てたくなる。

そして将成も将成で、仕事中に昨夜の圭祐の痴態を思い出したりする。そしてドヤ顔での「やっぱり好きだったんじゃねーか」発言。自信家な男って、相手が自分のことを好いてくれることまで含めて計算づくみたいで、ちょっぴりやーねえ。

そして将成、やたらと積極的である。いきなり圭祐に電話をかけ、「もう家の近くまで来てるから」と告げる。あせりまくる圭祐をヨソに、家にあがりこんでの、「またヤりたくなった」発言である。こ、この男…!

そして後ろから抱きしめてくる将成に戸惑い、「ヤりたいだけなら他の奴もいるだろ?」と聞く圭祐に、「お前がいって言ってるんだ、拒むな」と王様的な将成。

圭祐は見つめられて思わず視線を下げるも、唇を奪われて体を許してしまう…。

ここまでで私はもう「ぎゃー!やめて!だけどもっとやって!」と大興奮状態である。ちなみにまだ開始して15分ほどしか経っていない。若干無理やりで強引なシチュエーションが好きな私は、萌えポイントを刺激されまくりで、はわはわしながら眺めることしかできない。

冷静に考えて、これまでヘテロで来た男が「ヤりたくなった」だの、「お前だから」だのあまりにも遊び人的な言葉を同性に繰り出す図は異様なのだが、そんな違和感も吹き飛ばすほどの興奮である。

圭祐の方は若干の戸惑いを残し、「口調にも表情にも雰囲気にも、甘さなんてないのに。頭では期待するなと分かっているのに。熱に触れると感情と体はそれを裏切る」なんて言っちゃう始末です。これは手に負えねぇ。完全に「流されてヤられてる男」です。

初恋相手とは言えそんなんでいいのか!と叫びたくなるが、現実として多くのホモってこんな感じなので仕方ない。ゆきずりの一夜とか過ごしまくり。

そんな感じで熱い一夜を過ごし、次の日の朝、圭祐の寝顔を眺める将成。もちろん圭祐は半裸である。楽人くーん!君の寝顔、最高にカワイイよ!そしてやっぱりイイ体してるね!滑らかでシミ一つないイイ体だよ!

とか思っていたら、寝起きの第一声が、照れ笑いをしてからの「なに?」である。おいお前、昨夜の戸惑いはどこにいった。期待すんなとか言っといて、一晩一緒に過ごしただけで恋人面かよ!

しかし、これも現実のホモにはよくあること(だと思う)。ちょっと一晩よろしいかしら、なんてセフレの段階にすら至っていないというのに…。ちなみに作者さんは、ホモ界の事情に精通している方なのだろうか?

体を重ねるというのは、これ以上ない親密なコミュニケーションなので、きっとそこで勘違いが起きてしまうのだと思う。思う、が、しかし。その変わり身の早さってどうなのよ、圭祐くぅん?

おまけに首筋についてる痕を見て、「痕のこっちゃったじゃん」なんて、心臓の裏側がムズムズしてきて、思わず胸を掻き毟ってしまったわ。そんなもんなのかしらね。

しかしその後、お約束のように圭祐の元彼が現れる。関係が悪くなる圭祐と将成。そして、イケメンで仕事もできる男と評判の将成は、獣のように圭祐に襲い掛かる!

「俺がここにくる理由なんて、ヤること以外にねーだろ」と、無理やりに圭祐を脱がし押し倒す将成に、イヤだとはねつける圭祐。そうだ!それでこそだ!

そして微妙な擦れ違いを乗り越え、ついに恋愛生活をスタートさせる二人。蜜月というやつだ。微妙にいつも冷たい将成に、どこまでも献身的な圭祐。ううっ、まるで従順な犬のようだよ、かわいいよ。私は犬属性のついた男の子も大好物です。しかし微妙に将成に媚びる感じの圭祐が、ちょっぴり不安。

二人でドライブ(なんとオープンカーで)に行ったり、風邪の看病をしてあげたりと、仲を深める二人。ちなみにその中の回想で、将成は学生時代に、圭祐がバスの中で落とした栞をずっと持っていたことが発覚。とんだ変態野郎じゃねぇか、それでこそだ、と謎のガッツポーズをする私。

まだ若いのに、一人の部屋でパソコンに大写しにしたホモ映画を見ながら、ガッツポーズをする私…何かいろいろ終わっている気がする。そんな恐ろしい感覚にもめげず、視聴を続ける。

そんな二人に、さらに困難が降りかかる。圭祐が上司(元彼)と仕事で映画を観に行っているところを、将成に見つかってしまうのだ。

当然のように圭祐を疑い、厳しい言葉を投げかける将成。しかしなぜかそこから、将成は圭祐に再び襲い掛かる。なんでだ!なんでそこで襲い掛かるんだよ!!

そして圭祐の、「お前は俺のこと好きだって、一度も言ってくれたことないもんな…」という悲鳴。「お前との関係が分からない」「もう疲れたよ」「こんな気持ちのままじゃ、お前と寝るのも、顔見るのも辛いよ」と、涙を流す。

「少し距離置こう」というセリフを残し、家を飛び出す圭祐。うーん、ベタだ。ベタすぎる。しかも演技も微妙である。だからこそ、イイ。

もちろんその後なんやかんやあって仲直りをするのだが、ここから先はどうぞ皆様でご覧いただきたい。

ここからは私の感想なのだが、とにかく栩原楽人(「とちはららくと」と読むらしい)くんと、高橋優太さんが、どのようにベッドシーンに臨んだり、キスシーンを練習したのかが気になる。ちょっと調べてみたら、やっぱりベッドシーンなんかは何度も練習したようで、「じゃあここでこういう風に脱がせて」であるとか、「こう動いたらキスしてください」とか。男同士が二人で…。俳優さんって凄いんだなあ(煎餅バリバリ)。

最後らへんは、ベッドをピッと指差して、「じゃあ行こうか」で通じ合ったそうな。そんなのって、熟年カップルみたいね(?)。

仕事とはいえ、同性とキスなんかして、同性とベッドシーンを演じたりしたら、何か芽生えてしまうものがあるんじゃないかしら。おまけに本編では、なかなかのベロチューを演じていたりする。「ちょっと触れて離れる」くらいのものを想像していた私は、「えっ!?そんなに深々と!?な、なんどもっ!?どげんこつですか!!」と、肋骨を突き破らんばかりに心臓を跳ねさせた。大興奮である。

しかし、現実のことをふっと考えてしまうと、私としては切ない気持ちにならざるを得ない。「三次元」という現実の人が居る世界とはいえ、これはあくまでも演じられた虚構の世界。行間紙背を読み取るのは得意であるが、そのものをぶち当ててしまうと、微妙に受け取り方に困るのだ。

ものすごい剛速球を見ていて、「すごーい!あんな球投げれるんだー!」と言っていたら、いきなりキャッチャーミットを握らされたような気分である。

「三次元なのに虚構の世界」にどっぷりとつかりこんだ私は、ふと我とわが身を省みて、なんだか切ない気持ちになってしまった。

ホモ映画見ながら、PCの前で雄叫びを挙げる2○歳って、どうなのよ。おまけに甘々な二人の生活に耐えきれず、「はわわわわわ」なんて声を漏らしながら、手を顔の前でブンブンふってしまった。冷静に考えたら、かなりヤバい人である。

三次元に現を抜かすという、奇妙な体験をした。