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片想いというよりはファン

最近、私の「好き」と、世の中の「好き」に微妙に隔たりがあることに気付いてしまった。

私には、好きな人が常に数人居るのだ。いや、こう書くとまるで「凄く気の多い奴だ」と思われてしまうか。でもそうなのだ。

もちろん好きな人がたくさん居るからと言って、その人たち全てと関係を持つわけではない。というより対人関係にビビリな私は、むしろ関係を築けないことの方が多い。もちろん恋人などもってのほかである。お友達からよろしくお願いします、と下手に出させて頂いている。

私の名誉のために言わせてもらうが、二股などもしたことがない。というより恋人が居たことがない。ああ、名誉のために、自分の不名誉を明かしてしまった…。

私の「好き」は、「ファン」に近いのだ。

片想いの場合には、「○○くんとどうこうなりたい!」という発言が多くなるらしい。もちろんそうだろう。恋人関係になりたいし、それ以上のものを求めたりもするに違いない。きっとそうだ。まともな恋愛なんてしたことないので、たぶんとしか言えない我が身の歯がゆさよ…。

対して私は誰かを好きになると、その人語りが止まらなくなる。皿洗いをしながら、晩御飯を作りながら、そしてブログを書いているまさに今も、私のアイドル(今は今年入ってきた後輩の男の子)のことを考えている。彼のことは、頭の中にある棚におさまっているはずなのだが、いつでも少しはみ出していて、気が付いたらその棚の戸が開いてしまっているのだ。

試しに私がどんなことを頭の中で語っているのか、晒してよいものか不安ではあるが、ここを読んでくださっている方々に少しだけお見せしよう。

彼の少しくしゃりとした髪の毛は、思わず指を絡ませたくなるような柔らかさを思わせる。ゆるく波打っていて、彼の周りだけ爽やかな風が吹いているようだ。広大なすすきの野原に風が吹き渡る時、まるで海原のようにすすきたちが体をうねらせるのと同じように、彼の少しだけ長い髪の毛はうねっている。それから普段の彼が、笑っているわけじゃないのに、どことなく笑っているように見えるのは、口が大きいからだろうか。常に少しだけあがっている口角に、ユーモラスさが滲みだしている。

彼が笑うと、顔全体の印象が急に明るくなる。白い歯が、光を反射するどころか、発光しているに違いない。歯医者さんは彼の口の中を見る時には、サングラスをつける必要があるんじゃないだろうか。笑いかけられると、眩しくて直視できないような、ずっと見つめていたいような気持ちに駆られる。太陽に恋い焦がれ、太陽に近づきすぎてその身を焼かれたイカロスのように、私も彼を見つめ続けて、目を潰されてもかまわない。最後に目に焼き付ける(奇しくも文字通りである)のが、彼の笑顔なら本望である。ムスカ大佐のように、「目がっ!目がぁっ!!」と情けなく悲鳴をあげるようなことはすまい。

彼は背が高い。180センチ近くあるらしい。自分より背が高い人に威圧感をおぼえる私だが、彼からはそんな怖さを感じない。むしろ、ひなたぼっこをしている大型犬のような、大らかさを感じるのだ。もし世の中に「大型犬に似た男子ランキング」というものがあるなら、私は彼を推薦するだろう。彼が犬なら、きっと赤ん坊にのしかかられたりしても、大らかに頬をなめて慈しむような、そんな心優しい犬に違いない。

声は少し低くて、体の大きさにふさわしい落ち着きを兼ね備えている。多くを語る方ではないのが、ミステリアスでたまらない。ああ、彼はどんな風に普段の生活をしているのかしら。好きな食べ物は?お風呂の温度はどれくらいが好き?一日に何回くらいトイレに行く?

もしかして部屋にいる時は、平気で上半身裸で過ごしていたりしたらどうしよう。その体を惜しげもなく晒したまま、ベッドに寝転がってゲームやマンガを読むのかしら。私はシーツになりたい。

大体こんな感じである。語り始めるとキリがないので、このあたりでやめておこう。これ以上は興奮してしまって、私がまともな文を書けなくなる恐れがあるからな。

もちろん、私自身は頼れる先輩として、デレデレとした表情を見せるようなことはまずない。ごめんなさい、嘘をつきました。彼に話しかけられると、デヘーッと表情筋が言うことを聞かなくなる。いともたやすく懐柔されてしまった。

まったく、かわいい年下の男というのは、どうして人間をこんなにも腑抜けにしてしまうのだろうか。

こんな調子なので、私の中で魅力的な男の子はみんな、「好き」カテゴリにいれられてしまう。彼らをどうこうしたいのではなく、その箱の中から取り出して「こんなところが素敵」「日常はきっとこんな感じ」と、思索をめぐらすのだ。

こういうワケで私は、自分の「好き」をファンの「好き」と一緒だと考えている。いわば私は、身の回りのかわいい男の子ファンなのだ。今回取り上げた彼以外にも、密かにアイドルとして崇めている男の子がたくさんいる。

ああ、全国のアイドルファンの皆様、「お前と一括りにするな」とは、どうぞ仰らないでくださいませ。何かを愛する気持ちに、貴賤はないのでございます。お互いの崇めるものを、どうぞ不干渉で讃えましょうぞ。

そして、もしも好きなものが一緒になったのならば、共にそのよさを語り合い、想像の翼をのばして飛びたちましょう。

ああ、ここまで書いてわかったことが一つ。

私ってこんなことばかり考えているから、恋人ができないのではなかろうか。ていうか恋ってどうするんだっけ、どうなったら恋なんだっけ。

しかしそんなことで頭を悩ますのも束の間。気が付けば私の脳は、彼のことを考え始めるのだ。

今夜彼は、一体何時に寝るのかしら、布団の柄はどんな柄なのだろう。パジャマはどんなのかな、高校時代のジャージに、普段着にはできないダサいTシャツだったりしたらかわいい。それともチェックの、いかにも寝間着といった感じのパジャマ?ああ、どんな服を着ていても、かわいいわ。

今宵も、彼を思う私の心に、休息は訪れないようだ。もういっそこれを恋と呼ぼうかしら、だけどこんな不毛な恋ってないわね。